平屋に中二階を設けるメリット・デメリット、注意点をわかりやすく解説
近年では平屋が人気を広げつつあります。ゆったりとした広い空間を確保しやすく、快適に生活できるのがその理由です。
たくさんのメリットがある一方で、「土地が広くないと間取りを自由に設計できず、部屋が狭く感じられるのでは」というデメリットもあります。
そんなデメリットを解消する手段としてよく使われるのが、中二階を設けるというアイデアです。
単なる1階建てでもなく2階建てでもない、中間の形を目指す方向性です。
そこでこの記事では、平屋に中二階を設けるメリットとデメリット、その際の注意点などについてわかりやすく解説します。
中二階とは
中二階とは、1階と2階の間に設けられる、どちらでもない階層のことを指します。
1階や2階は明確に分かれているフロアであるのに対し、中二階は1階部分の空間の1つとして、段差を加えて設けられたものです。「スキップフロア」と呼ばれることもあります。
見た目は1階の空間に属しているように感じられますが、明らかな段差がついているため、実質的にはフロアがもう1つあるような使い勝手になりますね。
単純に2階を設けるのに比べて、空間が広く見えるのが魅力となっています。
ロフトとの違い
1階の空間に段差を作って別個のスペースを設けるという意味では、ロフトも同じようなものです。
実際、中二階とロフトの違いは法的にはっきりとしていません。
中二階として設けた空間が、別の人にはロフトに映ることもあるかもしれません。
一般的な使い分けとしては、中二階が居住空間として扱われることが多いのに対し、ロフトは物置として扱われる傾向にあります。
その関係で、ロフトは天井の高さを低めに設定し、床面積に算入されるのを避けて作られるケースもあります。
平屋に中二階を設けるメリット
平屋に中二階を設けるメリットとしては、主に以下の4つが挙げられます。
- 立体感を活かした間取りにできる
- 空間を有効活用できる
- 採光性が高くなる
- コミュニケーションが取りやすくなる
順番に見ていきましょう。
メリット①:立体感を活かした間取りにできる
中二階を設けると、単に生活空間が広がるだけでなく、空間に立体感が生まれ部屋が広く見えるというメリットも生まれます。
平屋は横に空間を広く取るのは簡単なのですが、縦の広さを上手に活かすのが難しい性質があります。
天井が高かったとしても、それだけではデッドスペースのようになってしまい、開放感を抱くには至らないケースが多く見られます。
そこで中二階を設けることにより、居住空間を立体的に使うことが可能となり、縦に空間が広がったような感覚が得られます。
メリット②:空間を有効活用できる
前項と関連するメリットですが、空間を有効活用できるのも中二階のよいところでしょう。
平屋は1階建てであり、どうしても土地あたりの床面積は狭くなってしまいますね。
結果として生活スペースを確保しにくいので、「いまいち空間をうまく使えていない」という感覚を持ったまま生活することもしばしばあります。
中二階を設けると、ワンフロアでしかなかったものを2つの居住空間に分けられるため、一気に生活スペースが広がります。
単純に床面積が増えるだけでも、利便性は段違いであるといえるでしょう。
メリット③:採光性が高くなる
採光性が高くなるのも、中二階を設けるメリットの1つといえます。これは意外に感じる人も多いのではないでしょうか。
中二階を設けると、リビングと中二階のあいだに間仕切りがなくなり、リビングの窓から差し込んでくる太陽光を部屋全体に取り込めるようになります。
通常の家屋の場合、もっとも日当たりが良い方角にリビングを設け、それ以外の部屋とリビングとは壁で遮られるのが一般的です。
中二階を採用すれば、リビングと空間が一体化し、家のなかで日当たりのよい空間を多く確保することが可能となります。
メリット④:コミュニケーションが取りやすくなる
中二階という新たな空間を設けることにより、コミュニケーションが取りやすくなります。
中二階がない平屋においては、リビングに用のない家族は別の部屋にいることになるでしょう。
結果として、同じ平屋のなかで家族が散らばった状態に。
そこで中二階を設けると、リビングと空間が続いている中二階を単独の部屋として使えるようになります。
軽く呼びかけただけで応じられる距離感なので、個別の部屋を使う場合と比べて、家族間のコミュニケーションが取りやすくなるでしょう。
平屋に中二階を設けるデメリット
平屋に中二階を設けるデメリットとしては、以下の5つが挙げられます。
- 建築費用が高くなる
- 空調の工夫が必要になる
- 天井が低くなる
- 固定資産税が高くなる
- 業者の選定が難しい
順番に見ていきましょう。
デメリット①:建築費用が高くなる
中二階を設けることで、そうしなかった場合と比べて建築費用は高くなります。これは純粋にデメリットといえるでしょう。
平屋はシンプルな構造なのがメリットですが、中二階を設けることにより、その構造がやや複雑になり、必要な建材も多くなります。
結果として、建築費用が高くなるのは当然のことでしょう。
中二階を設けたい場合には、具体的にどれくらいのコストがかかるのかを建築業者と相談しながら、予算を調整する必要があります。
デメリット②:空調の工夫が必要になる
中二階を設けると、空調の管理に工夫が必要になります。
本来であれば暑くても寒くても問題なかった空間が居住空間となるため、その場所についてもきちんと空調が行き届くことを考えなければならないからです。
中二階を含めてしっかりと空調を整えるためには、住宅自体が高い断熱性能を持っていることや、空調の配置を工夫することなどが求められます。
とくに冬場になると暖かい空気が中二階に集まりやすく、隣り合った部屋が寒くなってしまう現象が起こり得ます。
すべての季節について、きちんとシミュレーションする必要があるでしょう。
デメリット③:天井が低くなる
中二階を設けることで、その部分の天井が低くなってしまうことも、デメリットとして考慮する必要があります。
天井が低いことは閉塞感につながるので、甘く考えてはいけません。
平屋全体の天井の高さをしっかり把握したうえで、中二階を設けた場合にそれがどう変化するのかをしっかり考える必要があるでしょう。
きちんと数字をはじき出して、快適な生活空間の確保をシミュレーションするべきです。
デメリット④:固定資産税が高くなる
中二階は床面積として算出されることが多いので、設けなかった場合と比べて固定資産税が高くなるデメリットがあります。
中二階が床面積にカウントされるか否かは、各自治体の規定によっても異なってくるため、事前にしっかり確認しておきましょう。
デメリット⑤:業者の選定が難しい
中二階は単なる平屋と比べると高い技術が必要となるため、業者の選定が難しいのもデメリットの1つ。
単純に安い見積もりにつられて業者を選んでしまうと、あとになって何かしら望みと違うことが起こりかねません。
業者を選ぶ際には、可能な限り口コミ評判などを調べたり、本契約の前に具体的な相談をしたりといったことを積み重ねましょう。
中二階のある平屋の間取りで注意すべき5つのポイント
平屋に中二階を設けるにあたって注意すべきポイントとしては、以下の5つが挙げられます。
- 高い天井に吹き抜けを設ける
- いろいろな場面に応じた空間を作り出す
- 床や階段に収納スペースを設ける
- 土地の高低差を活かす
- さまざまなデザインを共存させる
これらを工夫することで、生活の快適度はぐんと上がるでしょう。
ポイント①:高い天井に吹き抜けを設ける
中二階を設ける際には、天井裏を利用して吹き抜け空間を作り、そこをうまく利用しましょう。
そうすることで平屋でも空間を広くでき、開放感のある間取りが実現できます。
高い天井に吹き抜けは高級感もあるので、人気ですよね。
【関連記事】吹き抜けのメリット・デメリットとは?寒さ対策や施工事例をご紹介
ポイント②:いろいろな場面に応じた空間を作り出す
やみくもに中二階を設けるのではなく、いろいろな場面に応じた空間を作り出すよう考えましょう。
中二階を設けることで、大勢で過ごせるリビングという空間に密着する形で、プライベートの空間が1つ生まれることになります。
この2つの空間の関係性をどのように利用するかは、家族構成やそれぞれの家族のビジョン次第。
年月が経って家族の年齢や人数に変化があることまで頭に入れたうえで、さまざまな使い方ができる空間を築いておきましょう。
ポイント③:床や階段に収納スペースを設ける
中二階を設けることで、リビングと連接した空間に床や階段が増えることになります。
ここに収納スペースを設けることで、無駄なくすべての空間を有効活用できるでしょう。
デッドスペースをしっかり活用することに成功できれば、使い勝手の良い平屋になります。
中二階を設けるついでに収納スペースを増やし、満足感のある生活空間を実現しましょう。
ポイント④:土地の高低差を活かす
平屋を建てる土地に高低差がある場合、それを活かして間取りを設計するのもテクニックの1つ。
傾斜地に住居を建てる際には、中二階を設けると高低差を解消できます。
先述したように、開放的な空間を演出することもできるので、平屋で中二階を設ける方も多いですね。
ポイント⑤:さまざまなデザインを共存させる
さまざまなデザインを共存させるのも、中二階をうまく採用するポイントの1つ。
1階と中二階は同じ空間を共有していますが、概念としては別の部屋です。
そのため部屋のデザインを大きく異なるものにすることも可能となります。
リビングにはリビングの、中二階には中二階のコンセプトが、それぞれの家庭にあるはずです。
そのコンセプトにもとづいて、満足のいくデザインを個々に考えてみましょう。
まとめ
平屋に中二階を設けるメリットやデメリット、設ける際の注意点などについて解説しました。
中二階は独立したフロアではない特殊な形の空間です。
特殊性を上手に利用することによって、通常の2階建て住宅には不可能な住み心地や使い勝手を実現できます。
一方で、その性質をうまく理解しないままやみくもに設けてしまうと、デメリットのほうが前に出てきてしまうかもしれません。
この記事をじっくり読み込んで、生活を彩る素晴らしい中二階を設計する際の参考にしてください。
アットホームラボでは、設計士と直接話せる無料相談会も開催しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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この記事の監修 アットホームラボ代表 青木真大(あおきまさひろ)
二級建築士、二級建築施工管理技士
2006年建築デザイン学部を卒業後、東京と新潟の建築事務所にてデザイン実務を経て、株式会社アオキ住建へ入社。 建築業界で15年間の設計、現場監督経験を経て、住宅事業部の責任者として1,500件以上の新築及び大規模リノベーションに関わる。
新築だけでなくリフォームも承っておりますので、気になる方は是非無料相談会にご参加ください!
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