高床式住宅とは?メリットやデメリット、高床式住宅へ迷った際の解決策も
一戸建てを建てるときの選択肢の中に、『高床式住宅』があります。
高床式と聞いて、歴史の授業の時に習ったことを思い出した方もいるかもしれません。
湿度が高い日本では、古くから高床式という建築様式が用いられてきました。
現在でも、土地の狭い都心や雪の多い地域では、多くの高床式住宅が建てられています。
高床式住宅とはどのような住宅なのでしょうか。この記事では高床式住宅の特徴やメリット、デメリットについて詳しく解説していきます。
高床式住宅の特徴
高床式住宅とは、床面を地面より高い位置に作る住居のことです。
床と地面が離れているため、通気性に優れています。
高温多湿の地域に適していて、東南アジア、日本にも多く建てられています。
風通しを良くすることで湿気を避け、穀物などが腐るのを防いだり、害虫や害獣から収穫物を守ったりするために世界各地で用いられてきました。
他にも高床式には次のような特徴があります。
- 地表を整地しなくても建てられるため、傾斜地や、凸凹の土地、水上にも建てることができる
- 床下の空間を有効利用することができ、狭い土地でスペースを確保できる
- 雪が多い地域で、屋根の雪が自然落下しても、居住スペースや出入り口が埋もれることがなくなるため、除雪する回数が少なくて済む
このような特徴をみると、とても魅力的な住宅ですね。
しかし、高床式住宅にはメリットもありますが、デメリットもあります。
それぞれ詳しく解説していきます。
高床式住宅のメリット
高床式住宅のメリットには主に以下の2つが挙げられます。
- 湿気や水害を防げる
- 駐車スペースを確保できる
狭い土地に家を建てる場合、車を持っている方にとっては駐車場のスペースはかなり重要視されますね。
それでは高床式住宅のメリットを詳しく見ていきましょう。
メリット①:湿気や水害を防げる
高床式にするメリットは、通気性がよくなり、湿気を防げることが挙げられます。
このメリットは縄文時代から、倉庫を高床式にすることで、通気性を良くし、収穫物が早く腐ることのないように用いられてきました。そして床を上げることで、住宅の浸水のリスクを下げることができます。
海沿いや川沿いに建てられている家では、大雨のたびに浸水の被害に悩まされてきました。この家を高床式にする方法は、世界中に古くからある水害対策です。
メリット②:駐車スペースを確保できる
日本では、高床式にして1階を駐車スペースの確保に使うことが多いです。
土地の狭い都心では、スペースを確保するために、戸建てや集合住宅の1階が駐車場になっています。
そして豪雪地帯でも、車や車庫に雪が積もるのを避けるために、住居の下を駐車場として利用することが少なくありません。
豪雪地帯の多くは地方にあります。地方に行くと移動に車が必須のところも多いです。
1階を駐車場にすると、出掛ける前に車の雪を落としたり、車庫の雪かきをする手間が省けることも大きなメリットの1つとなります。
高床式住宅のデメリット
高床式住宅のデメリットには3つがあります。
- 家の出入りが面倒
- 耐震性が低くなる
- 費用も割高になる
家を建てる方にとって重要なことばかりですので、デメリットはしっかり理解した上で、高床式住宅を考えたいですね。それぞれ詳しく見ていきましょう。
デメリット①:家の出入りが面倒
高床式住宅では居住スペースや出入口が2階にあり、階段で行かなければならないことが多いです。
家の出入りは毎日のことですので、不便であってはなりません。
しかし、高齢者や小さいお子さんに階段の上り下りは想像以上に負担がかかります。
高齢者や小さいお子さんがいるご家庭では、高床式にすることで階段のあり方について考える必要があります。
例えば、一段一段を低いものにすることや、手すりをつける、スロープにするなどがあります。
もし車いすになると、スロープにしないと外に出ることもできなくなってしまいますね。
もし高齢者や小さいお子さんがいなくても、高床式にするならば、将来のことを考えて出入りがしやすい家づくりを考えた方がいいでしょう。
デメリット②:耐震性が低くなる
高床式住宅にすると耐震性は低くなるのでしょうか?
地震が多い日本にとって耐震性は家を建てる上で重視される点の一つだと思います。
高床式住宅の耐震性について、新潟県にある自治体の組合が調査を行いました。
新潟県には高床式住宅が多くあります。
日本での高床式は下が駐車場になることが多く、通常の住宅より壁が少ない造りになります。
以前、新潟県で地震があったとき、高床式住宅の倒壊は見られなかったものの、多くの高床式住宅に欠陥がみられました。
それを機に高床式住宅の耐震性の調査が行われることになったのです。
この耐震診断結果では、壁が少ない住宅は地震での倒壊の可能性がかなり高いという判定がでています。
よって高床式の住宅は耐震性が低くなることが数字で出たということです。
デメリット③:費用も割高になる
建築費用はやはり少しでも安い方がいいですよね。
しかし家を新築するとき、土地や建物のルールを定めている、『建築基準法』を守らなければいけません。その基準を満たすために補強が必要になることがあります。
高床式住宅を選択して、地面から底上げをすると、耐震基準を満たすために、補強をします。
そして耐震性の観点から、高床式にする場合、原則として1階部分に鉄筋コンクリートを使用することになっています。
鉄筋コンクリートの部分が増えると、その分費用も増えますので、それも費用が割高になる理由の1つです。
他にも1階を車庫にすると車の出入り口は壁が使えないので、壁が少なくなってしまいます。壁が少ない部分には、梁や柱で補強が必要です。
補強をすることを考えると、高床式住宅は通常の住宅に比べ、割高になるようです。
地震の多い日本で高床式住宅はおすすめ?
日本は世界でも地震が多い国ですので、高床式住宅を不安に思う方もいらっしゃると思います。
実際、阪神淡路大震災の時、当時は旧耐震基準で建てられた建物が多く倒壊しました。その中に1階を駐車スペースにした多くの高床式住宅も含まれています。
旧耐震性基準は大地震を想定していなかったのです。
しかし、その教訓を踏まえて何度も耐震基準が見直され、地震に強い住宅づくりに力を入れてきました。
各住宅会社は独自の災害対策住宅を開発していますので、今後のアイデアと普及に期待ができます。
地震大国である日本において高床式住宅は耐震性や、費用面にしても、デメリットが多いとの見解があります。実際、現在はまだおすすめできる状況ではありません。
住宅の水害はどうするべきか
最近の豪雨災害の多さに不安を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
毎年のように豪雨被害のニュースを目にします。
もし豪雨被害にあった場合、心休まるはずの家に住めなくなることはあってはいけません。
どのような対策があるのか見ていきましょう。
防水壁を設置する
防水壁とはあまり耳にしたことがない方も多いかもしれません。
防水壁とは防水能力のある壁で、敷地全体を囲むものです。
豪雨や台風といった水害が起こりうる際に、出入口を防水板や防水扉を設置し、水が流れ込むのを防げるのですが、あまり一般的ではないようです。
しかし水害の多い地域はこの防水壁を設置することで、土のうや水のうなどを急に作る必要がなくなりますので、水害の多い地域での防水壁は、極めて有効な水害対策となりそうです。
防水壁の代わりとして、土のうが防水壁の代わりとなるので、土のう袋は普段から用意していた方がよさそうですね。
今は、土砂を集めなくても、水で膨らむ簡易土のうも販売しています。ぜひ検討してみてください。
耐水外壁を採用する
水害とは浸水することだけではありません。
雨が多い地域では、外壁の防水機能が低下すると雨漏りや湿気により、家を支えている木が腐ってしまうこともあります。
湿気を含んだ木材にはシロアリも寄ってくるので、あっという間に建物の耐久性が低下してしまいます。
雨に強い外壁材とは、窯業系サイディングや金属系サイディングがありますが、外壁材を雨に強いものにするだけで防水性能は十分とはいえないようです。
外壁にも防水塗装をすることで雨水が建物の中に入るのを防ぎ、建物の耐久性も維持してくれます。
家を建ててから10年ほど経過したら、外壁にも防水塗装を塗るように検討しましょう。
ひび割れや塗装の剥がれなどは防水機能低下のサインです。
高床式住宅にするか迷ったら住宅会社に相談しよう
高床式住宅はデメリットを解消するため、住宅会社によって様々な工夫がされているようです。
高床式住宅を希望している場合、その旨を担当者に相談をして、耐震性や価格、災害が起きた時にどうなるかなど、不安なことは聞いてみると良いでしょう。
プロ目線で、たくさんのアドバイスをもらえるはずです。
担当者の話を聞きつつ、たくさんの選択肢の中から、失敗しない家づくりをしていきましょうね。
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まとめ:高床式住宅について
高床式住宅について、メリットやデメリット、迷った際の解決策などを解説していきました。
地震大国の日本では、現在の高床式住宅の耐震性と、かかる費用などを考えたら、高床式住宅はおすすめできません。
「土地が狭い」「雪国で新築」など、高床式住宅を検討している方は、この記事でメリット・デメリットを理解したうえで、住宅会社の担当者に相談してみてくださいね。
いろいろな選択肢の中から、後悔のない家づくりを実現しましょう。
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この記事の監修 アットホームラボ代表 青木真大(あおきまさひろ)
二級建築士、二級建築施工管理技士
2006年建築デザイン学部を卒業後、東京と新潟の建築事務所にてデザイン実務を経て、株式会社アオキ住建へ入社。 建築業界で15年間の設計、現場監督経験を経て、住宅事業部の責任者として1,500件以上の新築及び大規模リノベーションに関わる。
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